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「カメラと機関車」Web復刻版公開に当たって

今回「カメラと機関車」(吉川速男著 昭和13年玄光社刊)のWeb復刻で、ご所蔵原書から全ページのスキャニングデータのご提供、および著者ご遺族、版元の玄光社の許諾等ご尽力頂きました村樫四郎さんより紹介文を頂きました.

『今を去る70年前、ハンディ35mmカメラの嚆矢となったライカを主に駆使して撮影した、絵はがきや公式写真ではないアマチュアカメラマン吉川速男氏の鉄道写真集「カメラと機関車」が出版されました.私が鉄道写真を撮り始めた高校時代、それを知った友人が父親の蔵書だった本書を譲ってくれる幸運に恵まれ、以来50年、何度も読み返し参考にさせてもらってきました.たぶん本書は、我が国初の、汽車好きの著者が自らシャッターを押して創った作品集です.昔の本ですが内容は今読んでも新鮮であり同好の士の参考となる部分があると信じています.
ところが近年本そのものが物理的な劣化が進んできて、背綴じが壊れてきたのを機に内容保存のためスキャンした際、幸運にも友人(の父)の好意で譲られた本を独り占めしているのが後ろめたい気持ちもあり、この内容を広く同好の士に読んで貰えないかと考えるに至りました.本書は希少本として古書界で時々取引される他、近年復刻出版もされましたが他の資料集とセット販売であり、いずれも高価で気軽に手に取ることはかないません.今回、著者吉川速男氏のご遺族と発行元の玄光社の御了解を頂き、寺田さんのご厚意によりHPで気軽に閲覧できるようになりますことは、原本所持者として喜びに堪えません.
交換レンズ、精細画像、高速シャッターを縦横に駆使した写真のあふれる現在、それらが手に入らない条件の下でかつて精一杯鉄道写真に挑んだ先達の作品から何かを感じ、諸兄の撮影の際生かされることがあれば著者も喜んでくれるに違いないと思います.
尚、吉川速男氏の著書は本書の他に多数玄光社から出版され、その殆どは(財)日本カメラ財団のライブラリーで閲覧出来ます.隣接のカメラ博物館見学と併せて出かけられてはいかがでしょうか?
URLは http://www.jcii-cameramuseum.jp/ です.(村樫四郎)』

本Web復刻は往年の幻の名著、写真集である「カメラと機関車」を多くの現在の、そして将来の鉄道写真愛好家の方々にも見て頂きたい、という村樫四郎さんの意に賛同して私、寺田牧夫(田駄雄作)が原書に忠実に写真ページ、テキストページをレタッチ復元して公開するに到りました.(この作業に1年もかかってしまいました)
戦前昭和13年の著作ですが、デジタル時代の現在でも充分通用する撮影テクニック技法や撮影の心構えには深く共感し、さらに教えられるところが多々あります.またこの時代としては優秀な製版・印刷方法による美しい作例写真はレタッチにより見事に再現できるクオリティを持っていました.
昭和13年の鉄道と云えばD51は標準型がやっとデヴューの年.本書に登場する機関車もD51型は一次型(ナメクジ)だけです.全体では9600型、D50型、C51型と流線型のC55型が多く写っています.さらにC53型、EF50型、EF52型、EF53型.そして先日引退したEF551の勇姿など、あまりお目にかかったことのない最盛期の活躍シーンが見られます.また当時の鉄道施設.働く人の姿から、一般庶民にはなじみが薄かったであろう特急列車の一等寝台車や展望車の車内光景など、大正から昭和初期の鉄道情景がこれほど多く記録された写真集も類が無く、大きな価値があると思います.文章の端々からは日華事変から大戦へ向かって行く、昭和13年当時の日本の社会情勢が読み取れるのも興味深い処です.

本書は巻頭にグラフ写真ページ(1〜72)が続いた後に本文テキスト「カメラと機関車」の項が始まり、その本文テキスト中にも適宜グラフ写真ページ(73〜148)が挿入されています.本文中には作例としてグラフ写真がそのナンバーで引用されています.
前半グラフページでは各ページに撮影データが示されていますが、後半挿入グラフではデータがテキストページの下部に記されています. 本Web復刻判では原書通り、各ページ順に閲覧するようになっていますが、テキストページ中の引用グラフ写真を容易に閲覧できるように、右側に並べたサムネイル画像からのポップアップリンクを設けています.

※本書文章中には、一部外国地名や表現方法等に現在では使わない、或は使用を控える方が好ましいと思われる単語や言葉が存在する可能性があります.
また旧かな使い旧漢字表記や誤植誤表記等も、昭和13年発行の原書内容には手を加えていません.ご了承ください.(一部引用グラフ番号の誤りは訂正しました)
復刻ページ画像下部には、若干ですが私の注釈を赤文字で付記させて頂いていますのでご参照頂ければ幸いです.

2009.9.1 寺田牧夫(田駄雄作)
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